話を聞いてあげると、読解力や作文力は育つ
わが子に「長い文章を読み、長い文章を書く力」を養うには、どうしたらいいのだろうか。やはり、たくさん読書をさせて、作文教室などに入れるべきだろうか。
これにも柳沢校長は意外なアドバイスをしてくれた。
「大事なのは『子供が話す』ことだと思います。つまり、話し言葉で表現した時に、きちんと相手に伝えることができるようにする。それはどういうことかというと、論理的であるということ。つまり、『いつ』『どこで』『だれが』『なにを』『なぜ』『どのように』をしっかりと入れて話すということです。こうしたことができるようにするには、子供が話している内容を真剣に聞いて、わからないことがあったら、親が質問する。これを繰り返すうちに、わかりやすく話すには5W1Hの説明が必要だと自然と理解するようになります。当然、わかりやすい文章も書けるようになります」
5W1Hをしっかり押さえて話すことが大事だとわかった子は、本を読む時もそれを意識して読めるようになる。今、描かれている場面は、いつのことなのか。「私」はどのように思っているのか。気持ちに変化があったのはいつなのか。それはなぜなのか。こうしたことを確認しながら読むということが、文章の論理構成を把握することであり、読解力につながっていく。
「家庭でもっともやるべき教育というのは、子どもに話をさせることだと思っています。多くの家では親ばかりが話してしまっていて、子供の話を聞いてあげられていないんです。だから、私はしばしば学校(開成中学・高校)で保護者の皆さんに『2:1の原則』でいきましょうと伝えています。子供に2話させて、親が1話しましょう、と」(柳沢校長)
親が話を聞いてあげると、学力もあがる
実は、この柳沢校長の「2:1の原則」は科学的にも裏付けられている。
東北大学加齢医学研究所所長の川島隆太教授が仙台市に住む合計7万人の小中高生を2010年から7年にわたって追跡調査(『学習意欲の科学的研究に関するプロジェクト』)した結果を解析すると、「家の人にしっかり話を聞いてもらった」と答えた子は、学力が上がるということが明らかになった。膨大なデータが強い因果関係を示しているのだ。
なぜ、親に聞いてもらうと学力が上がるのか。
「(親に受け止めてもらうことで)親子の愛着関係が高まり、子供の精神状態が安定。こうした親子関係にある子供は、家で安心して暮らしているから、落ち着いて勉強に取り組める」というのが川島教授の見解だ。
読解力の高さと学力の高さは非常に強い相関関係
これに加えて、話を聞いてもらって「読解力」が伸びたことにより、学力が向上した可能性が高い。
読解力はすべての教科の土台となる力だ。算数や社会、理科は、正しい知識を持っていても、問題文を正しく理解する読解力がないと正解を導き出せない。実際、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』によると、読解力の高さと学力の高さは非常に強い相関関係にあったという。
私立のトップ校である開成学園の入試問題では、国語はもちろん、すべての教科でかなり長い文章を読んで、問題を解かせている。
「制限時間内に長い文章を読んで、それがパラグラフごとにどのような相互関係になっているか理解できないと解けない問題です。長文の内容が理解できたか、できなかったかが第一関門になっています」(開成校長)
こうした力の土台が、子供の話を聞くということなのだ。「じっくり子供の話に耳を傾ける」ただそれだけでいい。5W1Hをひとつずつ質問して、子供から話を引き出せば、自ずと2:1の原則は満たされる。ただ、柳沢校長は、親が聞く時に「5W1Hがわからない」と厳しく子供に指摘するのは避けてほしいという。話すと親がお説教してくると思ったら、子供はもう二度と話したくないと口をつぐんでしまうからだ。(引用元:PRESIDENT Online 森下和海)
いかがでしょうか?
山口県公立高校入試の特徴として、「出題文が長い」「国語に作文がある」など読解力を基にした理解力を問う問題が多く出題されます。読解力は一朝一夕では身に付きません。日常的な子どもへの関わり方が重要なのがよくわかりますね。