23:41、
ついに僕は『P10』の搭乗口にたどり着きました。
窓ガラス越しに眼下に僕たちが乗るべき飛行機が見えています。
そして、空港職員にまくしたてるように拙い英語で、
『僕をあの飛行機に乗せてください。そしてまだ搭乗口を目指して走っている8人もどうか、どうか乗せて下さい。』
と懇願しました。
しかし、空港職員は『もう、無理。23:25の段階で搭乗手続きは〆切』
というようなことを僕に伝えました。
が、僕は食い下がります。
そして、空港職員は窓ガラス越しに飛行機を指さし
『もう、あの飛行機からタラップは外れているよ。だから君たちが乗ることは不可能なんだ。』
というようなことを言っていたような気がしました。
『デスレース』は全員リタイヤと告げられた瞬間でした。
そもそも搭乗手続き〆切が23:25、
『デスレース』の号砲が23:33の段階で全員リタイヤが運命づけられていたのです。
僕はこの事実を9人の中で一番早く告げられたのです。
滝のように汗が吹き出し、ふくらはぎの血管が脈打つ鼓動を感じ、
今すぐにでも座って楽になりたかったのですが、
僕にはまだ役割があるので、休むことなく来た道を引き返しました。
『もうこのレースは終わったんだよ。もう走らなくてもいいんだよ』
ということをまだ走っているかもしれない仲間たちに告げるという役割です。
会う者、会う者
僕の姿を見かけた瞬間
飛行機に間に合わなかったということを悟っていった感じでしたが、
不思議とだれにも悲壮感が漂っていない、むしろ何かを成し遂げたような
清々しい表情であったような気さえもします。
僕たちに落ち込んでいる暇などないのです。
次なるミッションは
『どうやって日本に帰るかを全力で模索せよ』
です。