奴隷道徳とルサンチマン
さて、結局ニーチェがなぜ
「神は死んだ」
という言葉を残したのかの
答えがまだでした。
「道徳」
小学生の頃に習った、懐かしい科目ですね。
ニーチェの言っている道徳とは、
かなり背景が異なりますが、
ニーチェは道徳というものの起源を
『奴隷にされた弱い民族のルサンチマン(嫉妬)』
としています。
奴隷道徳とは、
『嫌なことに文句を言わずに受け入れる人が善い』
という人間の本質を捻じ曲げたような
不自然な価値観です。
例えば、
彼らは「イソップ童話」の「取れないブドウを酸っぱいと言ったキツネ」と同じである。そのキツネは本当はブドウが欲しくてたまらなかった。実際にブドウが食べられるとしたら間違いなく食べた。しかし、ブドウは食べられない高さにあったため、彼は自分の都合でブドウの「価値」を落とす。
このキツネがまっすぐに人生を生きていないことは明らかである。そのうち、同じような狐が集まってきて、「ブドウを欲しがらないことは善いことだ!」という道徳や教義を打ち立て始める。彼らはずっと心の中で取れないブドウへの「ルサンチマン(恨み)」を抱えながら、ブドウを欲しがらない無欲な自分を誇りに思うのだ。そして、もしそこに頑張って飛び上がり、うまいことブドウを手に入れたキツネを見たら、彼らは「なんて意地汚い」「別にブドウだけが人生じゃないのに、あんなに必死になっちゃってさ(笑)。じぶんなら、そんなものを欲しがったりしないよね。」というゆがんだ価値観を持ち出して内面的に勝利することで、恨みを晴らし自分を慰めるのである。(「史上最強の哲学入門」(飲茶))
「神」とはそういった
ルサンチマンから生まれたもの
にすぎないと言っているのです。
だからこそ、絶対的な価値観などなく、
人々は自分自身のやりたいことに
もっと素直になるべきだと説いているわけです。
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