「あなたの苦手はどこから?」
突然ですが、僕は今、「熟達論」という本を読んでいます。
毎朝10分程度しか読んでないのでまだまだ途中なのですが、普段無意識下に置いているせいで言葉にできていない、“能力の成長・習熟のプロセス”について、とても強い腹落ち感を抱きながら、楽しく読めています。
色々と紹介したいことはあるのですが、別の本で佐渡島庸平氏が指摘していたこととも繋がりを持つ、成長をジャマするある要因についての説明に、今日は絞りたいと思います。
その要因とは、一言で言えば「苦手というラベリング」です。
佐渡島庸平氏は【観察力の鍛え方】という本の中で、苦手という言葉を「思考停止ワード」とさえ呼んでいる程、実は細かい分析や仮説立てを阻害する括りなんですね。
実際にそれはどういう風に内省を邪魔するのか、僕自身の経験談を基に、紹介します。
例えば、僕は昔から数学が“苦手”です。
―だから何ですか?と言われそうですね。
何故かというと、実はこの言葉だけでは、何も言っていない、何も検証していないに等しいからです。ここからさらに、丁寧な自己分析がマスト。要は、まだ入り口に立ったに過ぎないのです。
以下少し自分語りになりますが、一つの例として、お付き合いください。
冷静に考えれば、僕は小さい頃、算数が苦手だった記憶はあまりありません。実際、小学2年生のときは、100マス計算を解くタイムが、公文に行っていた同級生より早かったときもあるほどです。
それに、中学の頃に初めて取った内申「5」は、英語ではなく数学でした。だから僕は、少なくともこの時期までは、数学に関して苦手意識とかその辺は抱いていなかったのでは、と言えるわけですね。
・・「苦手」という意識を最初に強く抱いたのは、高校受験のときです。忘れもしない、ある記憶・・。
確か合同を証明する問題だったと思うのですが、全くわからずビタ止まりして、1行も書けずに撃沈・・。
そこで使い過ぎた時間と集中力が響き、帰宅後に自己採点したところ、数学全体で20点も無かったことを覚えています。
当然、目標点には遠く及んでいません。
本当に頭が真っ白になりました。
とはいえなんだかんだで志望校に受かってからは、不思議とまたしばらく順風な時期が続きます。
最初のクラス分けでは何故か発展クラスに放り込まれ、少し苦労したこともありましたが・・・。
文系に進級後、難度が低かったのもありますが、100点を2回取ったことも覚えています。(なんなら盆頃に実家に帰った際、母がまだ保管していました。恥。)
成績も「5」を取った記録が残っており、ここまでを切り取れば、「苦手」と定義するには厚かましすぎる、という感じがしますね。
実際はっきりと、センター試験の過去問でも二次関数・確率・三角比・三次関数などは得意だった記憶があり、模試でも調子がいいときは数I・A、Ⅱ・Bの合計で、ボーダーラインの6割強を取れていたとも思います。
・・・しかし、またもや事件は“本番”で発生します。三角比の問題を図に起こす際、斜辺の長さを書き間違えて、答えが出ずに10分以上フリーズ・・・。
得点源としてアテにしていた数I・Aが失敗に終わり、その日は帰ってから発熱しました。
以来僕は、経済学で使う微分・積分や一次関数といった最低限の数学以外、“苦手”と称して、ひたすらに避けてきました。
ここまで考えていくと、“苦手”という一言で括るには、やはり無理があると分かります。どちらかと言えば、“トラウマ”ですね。
人生の大一番において、僕は二分の二で数学に裏切られているわけです。
今のところ予定はないですが、例えば数学検定2級に受かるなどしてこの辺の印象をひっくり返せば、僕の苦手意識は消えるかもしれません。正体を知ってしまえば、「なんだ、こんなものか」と、拍子抜けする気持ちもあります。
こんな風に、“苦手”な科目を“苦手”の一言で終えてしまうと、本質を全く見つけられないというわけで、確かに危険な思考停止ワードだと呼んで良さそうです。
せっかくなので、他にも、僕が生徒との問答で見つけた“苦手”の例を、いくつか挙げてみましょう。
日本史が苦手と言っていた高校生に、「じゃあ縄文から令和まで、時代を全て言ってみて」と伝えたところ、室町が抜けたり、明治に詰まったりと、とてもアヤシイとわかったケース。
また別の例だと、理科の特定の単元ができないと悩んでいる生徒によくよく質問していくと、単にその始まりの授業をインフルエンザで欠席し、前提知識をそもそも習っていなかった、というケース。
他にも枚挙に暇がありません。そしてこれらのエピソードには、ある共通点があります。
それは、今現在の悩みの中に原因が無いということです。
簡単に言えば、思っているよりも遥か手前の段階でつまづいていて、それが今の学習に影響を及ぼしているということですね。
極論ですが、確率分布の平均や分散が“苦手”であるなら、もしかしたら小学校で習う分数の計算のルールがあやふやなのかもしれません。
あるいは、これもよくあるケースなのですが、単にその単元を習得するのに練習量が足りておらず、それによって“できない、から苦手”と思い込んでいるのかもしれません。
実際、あまりにもしょうもない原体験なのですが、僕が人生で初めて指パッチンを習得した際は、中指にマメができてそれが潰れる程、繰り返し、繰り返し、練習したものです。
2回、3回やってできないのなら、それは苦手なんじゃない。認識不足です。
10回やってできないのなら、それはセンスがないんじゃない。練習不足です。
30回やってできないのなら、それは適性がないんじゃない。経験不足です。
50回やってできないのなら、それは才能がないんじゃない。頭を使ってなさすぎです。
100回やってできないのなら、そこで初めて、やり方や認識自体を疑いましょう。
色んなバグは考えられますが、それらを確実に見つけて修正するには、やはり前学年どころか、前々学年、下手すれば小学校のレベルにまで戻って、きちんとやり直すことが大切です。
ここまで書いてきた通り、目先の困りごとの付近に意外と原因は無いことが多いので、ヘンなプライドは捨てて、驚くほど基礎・基本のところからやり直した方が確実です。
―段々最初の話と繋がってきましたね?そう、【復習】の大切さは、ここにあるのです。
もちろん、むやみやたらに低学年の内容からやること自体も悪くないのですが、それだとやはり効率が悪いし、何より自分のことを自分で客観的に見つめて、弱点を言語化していく作業が必要となります。
これができる人は、大人でも稀有だと思われないでしょうか?
僕自身も、自分事に対しては、胸を張って「できる側だ!」なんて、恐ろしくて口に出せません。
しかし、対生徒となれば話は別です。
僕らは、何年にもわたって、それこそ何百という生徒さんを見てきました。
大体のバグの場所も、それの伝え方も、その改善策も、かなりストックされています。
今回のタイトルを読んで、「冬季講習?いやいや、ただのやり直しでしょ?」という印象を、もしかしたらお持ちかもしれません。
いえいえ、そんなに淡白な時間には致しません。天下一品のラーメン並に、こってりさせる所存です!!
・・・ところで、最後になりましたが、改めて「復習」の意味を辞書で調べてみました。すると、こんな風に書かれています。
繰り返しならうこと。一度学んだことを繰り返して勉強すること。おさらい。
これ自体は平々凡々というか、「そうだろうな」という印象を持ちますが、この「復習」という意味を英語で言うとどうなるか調べてみると、すごく奥深い考え方がありました。
それは、「review」です。
そしてこれの意味を英英辞書で引いてみると、本来の「復習」の在り方について、「なるほど!」と思えるヒントが書かれていました。
a careful examination of a situation or process
訳:現状や過程を、入念に調べること
一度積み上げた知識や経験自体と、それによって現出している”今このとき”を、丁寧に確認すること。
復習の正確な意味合いとして、すごく納得感があります。
皆様の、あるいはお子様の、”夢や目標”を叶えるために今取り組んでいることが、もししっくり来ていない場合は・・・
やはり、”現在”にテコ入れをする必要があります。
“現在”へのテコ入れとは、つまりレビュー、復習がそれに当たります。
この冬季講習を、その端緒としてご活用いただければ、講師として、学習塾として、本当に幸甚です。
ぜひ、受講をご検討ください!!(問い合わせ先は末尾に一覧で載せています!)
・・・ということでまとめとして、論語の一節を引用して終わりにしたいと思います。
学びて時に之(これ)を習ふ、亦(また)説(よろこ)ばしからずや。
復習は知ってることをただやり直すためではなく、その過程で新たな気付きを得るために行うもの。
それが成されたとき、学問の本当の楽しさを味わえる。僕はそんな風に解釈しています。
中学の頃は気にも留めなかったこの教えが、今は全く別物の、いわばとてつもなく深い意味合いを帯びているのは、本当に面白いなと思いますね。
それでは4,000文字近くの長文でしたが、お読みいただきありがとうございました!!
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