山口市・宇部市の学習塾『かわしま進学塾』の野上です。
最近、認知科学に関連する本をいくつか読んで、多くの興味深い考え方に出会いました。
その中で、『コンフォートゾーン』というものがとてもしっくり来たのでご紹介します。
コンフォートゾーンとは何か?
科学的な説明では、コンフォートゾーンは「不安レベル」と関連しているといわれています。不安にならない行動範囲が、その人のコンフォートゾーンです。夕食を作る、通勤する、テレビを見るというような、いつもやっていることを頭に思い浮かべてみてください。不安になったり心配したりしない、慣れ親しんでいる毎日の行動は、コンフォートゾーンの一部だといえます。
新しいことに挑戦するような時は、「コンフォートゾーンの外に出る」という言い方をよくしますが、不安レベルが上がるような行動は、コンフォートゾーンの外に出ていると考えていいでしょう。例えば、毎日の通勤でも、渋滞していたり、満員電車に乗るのが好きじゃなかったりすれば、不快な気持ちになるので、コンフォートゾーンにいるとは言えません。
不安というのは、わざわざ探し求めるようなものではありませんが、少しの不安であれば驚くほどメリットがあります。ほんの少し不安や心配があった方が、仕事を終わらせたり、成果を上げたりする後押しになることが多いです。1908年のマウスを使った研究で、作業がとても簡単な時は、不安レベルが上がるにつれてパフォーマンスも上がることが分かりました。
しかし、作業が難しくなると、不安レベルが上がるだけではパフォーマンスの向上につながりませんでした。作業の難しさと不安レベルの組み合わせが、ある特定のしきい値を超えると、パフォーマンスは落ちました。
コンフォートゾーンは、上のイラストのように、コンフォートゾーンの外に出るとラーニング(勉強)ゾーンに入り、さらに広がり不安レベルが高くなり過ぎると、最終的にパニックゾーンになると描かれることが多いです。このイラストを見るとマウスの実験の結果も納得です。
作業が簡単な時は、マウスはコンフォートゾーンにおり、何の不安も感じずに完ぺきに作業をこなしていました。不安レベルが上昇すると、マウスはラーニングゾーンに入り、パフォーマンスはさらに向上しました。しかし、難しい作業になると、ラーニングゾーンに留まらずに、すぐにパニックゾーンに入り、パフォーマンスが落ちました。
コンフォートゾーンを出る、不確かなことへの対処法
コンフォートゾーンから出ることで襲ってくる大きな不安により、不確かなことのレベルが上がり、落ち着かない気分になります。いつも料理をしている人にとって、夕食を作るのはまったく大したことではありません。慣れ親しんだことであり、どんなことが起こるかわかっています。初めて車を運転したり、スカイダイビングをしたり、新しい仕事を始めたりすることは、どれも不確かなことに満ちていて、不安になります。
不確かなことがあると、ネガティブな体験に対してより強い反応をするようになります。不確かなことのせいでネガティブなイメージが先行すると、何が起こるかわかっている時に比べて、冷静さを失いやすいということが研究により証明されています。また、人間は新しいこと/ものに対しても、何度も繰り返すうちに好きになることはあっても、最初はネガティブな反応をすることが多いです。
研究者のBrené Brownさんは、「不確かな社会的、政治的、経済的状況においては、コンフォートゾーンはかなり小さくなる」と言っています。恐れることが多いほど、コンフォートゾーンが小さくなり、コンフォートゾーンから外にでることがより困難になります。
親しみがあるものは、居心地が良く、楽しむことができるので、新しいものに対して警戒するのは当然です。進化論的な視点から見ると、親しみのあるものはより安全とみなすため、知っているものの方が魅力的に感じるのです。脳は「前にこれをやってみたけど死ななかった。だから多分もう一度やっても安全だ」と考えます。新しいことに挑戦するにはエネルギーが要ります。だから、疲れていたり元気がなかったりする時は、新しいリスクを冒すよりも、慣れ親しんだ習慣に甘んじることが多いのです。