2009年、5月2日は忌野清志郎さんの命日です。
その1週間後の9日に行なわれた告別式で、
甲本ヒロトさんが読み上げた弔辞を紹介します。
ロック葬と名付けられたその葬式に
ふさわしい内容で鳥肌が立ちます。
甲本ヒロト「最高のロックンロールをありがとう」
キヨシロー。
えー、清志郎、あなたとの思い出に、ろくなものはございません。
突然呼び出して、知らない歌を歌わせたり、なんだか吹きにくいキーのハーモニカを吹かせてみたり。
レコーディングの作業中には、トンチンカンなアドバイスばっかり連発するもんで、レコーディングが滞り、そのたびにわれわれは、聞こえないふりをするのが必死でした。
でも、今思えば、ぜんぶ冗談だったんだよな。
今日も、「キヨシローどんな格好してた?」って知り合いに聞いたら、「ステージ衣装のままで寝転がってたよ」って言うもんだから、「そうか、じゃあ俺も革ジャン着ていくか」と思って着たら、なんか浮いてるし。
清志郎の真似をすれば浮くのは当然で、でもあなたは、ステージの上はすごく似合ってたよ。
ステージの上の人だったんだな。
一番最近会ったのは、去年の11月。
The Whoの来日公演で、武道館の。
そのとき、あなたは客席の人でした。
ステージの上の清志郎じゃなくて、客席の人でした。
たくさんの人が清志郎に憧れるように、あなたはロックンロールに憧れていました。
僕もそうです。
そんな、いち観客どうしの共感を感じ、とても身近に感じた直後、あなたはポケットから何かを出されて。
それは、業界のコネをフルに活かした戦利品、とでも言いましょうか、ピート・タウンゼントの使用するギターのピックでした。
ちっともあなたは、観客席のひとりじゃなかった。
僕があまりにもうらやましそうにしているので、2枚あった、そのうちのひとつを、僕にくれました。
(ポケットの中を探る)
こっちじゃねえや…
これだ。
ピート・タウンゼントが使ってたピックです。
これはもう返さなくていいね。
納めます。
ありがとう。
一生忘れないよ。
短いかもしれないけど、一生忘れない。
ほんで、ありがとうを言いに来たんです。
数々の冗談、ありがとう。
いまいち笑えなかったけど。
はは…。
今日もそうだよ、ひどいよ、この冗談は…。
うん。
なるべく笑うよ。
そんでね、ありがとうを言いに来ました。
清志郎、ありがとう。
それから後ろ向きになっちゃってるけど、清志郎を支えてくれたスタッフのみなさん、それから家族のみなさん、親族のみなさん、友人のみなさん、最高のロックンロールを支えてくれたみなさん、どうもありがとう。
どうもありがとう。
で、あとひとつ残るのは、今日もたくさん外で待っている、
あなたのファンです。
彼らにありがとうは、僕は言いません。
僕もそのひとりだからです。
それはあなたが言ってください。
どうもありがとう! ありがとう!
甲本ヒロトさんらしいロックな弔辞。
それだけにせつなくて感動しました。
清志郎さんは天国でも
ロックに生きてるんだろうなー。